店長story34 《がごめ昆布しょうゆ》
〇前回までの店長story 33はこちら
一人で昆布を売っていた2013年。
たまに「タラコある?」という問い合わせが来ました。
他にもイクラ・酢イカ・昆布巻き等の問い合わせがありましたが、
もう作ることはできない為全てお断りしていました。
そのような問合せの電話はその後、1年くらい続きました。
今までたくさんのお客様に美味しさをお届けしていたことを
改めて知り、一人しみじみ・・・することが多かったです。
そんな中、あるお客様から
「がごめ昆布しょうゆが欲しい」
と、電話が来ました。
「がごめ昆布しょうゆしか使えない。
もう、元の醤油には
戻れないんだわ。」
その当時は破産した前会社から私が個人で買い取った醤油を
販売していました。
それは義父が前浜で採れるがごめ昆布で作った人気のある
醤油でした。
「いか刺しに合うから!
旨いから!」
結婚の挨拶に行った時、朝水揚げしたイカの刺身を
「がごめ昆布しょうゆ」で食べるよう勧められました。
その時、私はイカ刺しよりも
その醤油の美味しさに感動しました。
「しょっぱくない。」
実は私の父はイカ釣り漁師だったのでイカは食べ慣れていました。
しかし、その時食べたイカ刺しは今までのものとは違いました。
醤油がちゃんとイカ刺しを引き立てていました。
醤油の角が取れ、優しい味でした。
その時から私は、
毎日この「がごめ昆布しょうゆ」を使うようになりました。
醤油は全国から注文を頂いていました。
私と同じようにこの醤油を使っているお客様がいました。
前会社がなくなった時、
毎日使っている醤油がなくなったら、困るだろうな。
そう思いました。
他に醤油はいくらでもあるけど、
この父が考案した醤油、私も使い続けたい。
今まで作ってきたイクラもタラコも、
昆布巻きに松前漬けに酢いかも・・・
全部無くなってしまったけど、
この醤油だけは無くしてはダメな気がしました。
「がごめ昆布しょうゆしか使えない。
もう、元の醤油には
戻れないんだわ。」
その言葉一つだけで
私を前に進めてくれるのには十分でした。
何もなかった私にこの仕事を
続けようとする力を与えてくれました。
その頃は、前会社閉鎖に向かうまでに
いろいろあった出来事に対して
・・闇の感情・・
を抱えていました(^^;
お客様の声でスッと救い上げられ、なぜ商売を続けようとしているのか
闇の心の中に小さく見え始めました。
お客様と共感しあえたことが嬉しかったです。
それから、
販売を続ける為、同じ味を作ってくれる製造元を
探し始めました。
次回「店長story 35」は こちら
店長STORY一覧は こちら