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50年前、菅さんに恋をしたある漁師の物語 1
「いるがぁ~?」
2020年9月のある日、
遅めのお昼ご飯を食べていると
近所に住む漁師のおじさんが、
缶ビール1箱を抱えてやってきました。
「どうしたの、おじさん!?」
「父さん、いだが?」
「今、魚積んで走ってるよ!」
「んだら、これ父さんに渡してけれ。 50年前のお礼だぁ」
「50年前って? お礼って?なしたのおじさん!?」
おじさんは遠い過去を懐かしむように
玄関先に腰を下ろしてゆっくりと話し始めました。
・
・・
・・・
昭和40年(西暦1965年)、
伊藤忠男(仮名:さっきのおじさんのこと↑)は
高校を卒業して、父親と一緒に
前浜で上がる鮮魚を地域住民に配る商売をしていました。
まじめな忠男は毎朝市場で仕入れてきた魚を
仕分けして自転車の荷台に積み、町内を売り歩いていました。
忠男は子どもの頃から海に潜り、 山を駆け回り、
ここ尾札部町の豊かな恵みを知り尽くしていました。
8歳の頃には夜寝ていると、
「タコの声」が夢の中で聞こえてきました。
「オラ、ここにいるぞ・・・」(byタコ)
朝4時、目が覚めた忠男は一目散に
目の前の海に入り、タコつぼを探しました。
「やっぱり、ここにいだが」(by忠男)
忠男は海に入って、ものの数分で
タコを仕留め、丘へあがってきました。
毎日自然を相手に生きていました。
忠男の売る魚は、新鮮で味が良く、値段も安かったので
町内の住人達からはとても重宝されていました。
ある日、尾札部中学校教師が住む
職員専用住宅へ自転車を走らせました。
東北地方から新しく 赴任してきた
教師がいると聞いて、北海道のうまい魚を
届けてやろうと 何種類かの魚を荷台に積みました。
「さがな~、さがな~、新鮮なさがな~」
大声をあげながら自転車をこぎました。
職員専用住宅に着き、
「こんにぢは~、さがな持ってきました~!」と
声を上げるとそこに出てきたのは若い女性教師でした。
年にして20代前半の素朴だけども
かわいらしい女性でした。
「あら、こんにちは!魚持ってきてくれるんですね!どんな魚があるんですか?」
「・・・えっ、あの、え~ど・・・」汗
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・・
・・・
(めんけぇなぁ・・・)
ぽぉぉぉぉぉぉぉぉ~♡(by忠男)
忠男、しばらくフリーズ。
忠男18歳、初めて恋に落ちました。
(このお話は9月に近所の漁師のおじさんから聞いた
おじさん自身の昔ばなしです。)
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次回のストーリー
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