店長story 21《絶念》

更新日:2020.02.22

〇前回までの店長story 20はこちら

2013年2月

時化で海が荒れ
魚の水揚げがない日が続きました。

今降っている雪なのか
すでに積もっていた雪なのか。

横殴りの北風が吹く白い世界の中で
雪が激しく舞っています。

全身が雪に包まれ睫毛にも雪が付き
視界を濡らします。

私は会社を立て直す
ことを諦めました。

可能性のある計画書を
作ることが出来ず

工場を再稼働させ
奇跡的に売れる商品を
作り出すことは
不可能と諦めました。

当たり前と言えば
当たり前です。

商売を知らない人間が
水揚げ量が減り続け
機能しないただ経費ばかりかかる
大きな工場や冷凍冷蔵庫を抱え
負債が山積みの会社を
立て直すなんて。

私の愚かさと
無力を感じました。

父が今後返済が
できなくなる話をしてから
銀行員の人たちが
会社ではなく家にも
やってきました。

父や主人がいない時は
私と母はカギを締めて
応対を避けました。

連日続いていたので
怖いと思いました。

預金の差し押さえも
始まりました。

(はっきりした時期は
わかりませんが、
このあたりからだったと思います)

ある朝、気力をなくしている
父母と主人に提案しました。

「山の工場は全て閉鎖したけど
下の方の工場もこのまま続けても
お金を返せるだけの売上を
立てることは難しい。

このまま続けても
借金は膨らむだけで
一生追い立てられながら
生きていくことになる。

これ以上あがいても
辛くなっていくだけだと思う。

 ・・・お父さん、会社
       もう やめませんか。」

辛い決断を迫ると同時に
父のプライド、自尊心を傷つける
話をしていると思いました。

ただ、現実から目を背けないで、
代表者としてきちんと整理を
してほしかったです。

南かやべ内にある業者や
全国の取引先への返済は
全て済ませる事。

残っている従業員に説明して
給料を払ってから解雇すること。
金融機関への報告謝罪。。。

「・・・んだな。」

辞める勇気。

自分の肉が千切れるくらいの
辛い決断だと思います。

この尾札部町で何十年も
やってきた会社をなくすんです。

大漁が続き、どんどん施設や工場を作り
売上がうなぎのぼりだった絶頂期。

その後徐々に衰退していく水揚げと
意図せずに膨らんでいく経費。

大きくなることには銀行の援助もあり
トントン調子で登っていくが、
小さくなることは誰の心も
許さなかったし、出来なかった。

もうこれ以上
目を背けることはできません。

これから何を
どうやっていくのか

この決断は正しいのだろうか。

なんとかなる
なんとかなる
なんとかなる

具体的なことなんて
何も思いつかずに

いつもそればっかりな自分を
また愚かな人間と思いながら

その日の夕方、視界の悪い峠を越え
私は湯婆婆さまのところへ

「会社をやめる」報告に行きました。

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次回の「店長story 22」
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店長STORY一覧は こちら

辛いことも多かったですが、
自分の人生の舵取りをする為に
必要な経験をたくさんしたと思います。

この店長STORYは
昔の暗い話ばかりが続きますが

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たまえ店長

能戸たまえ(店長)です。 昆布の魅力にハマり、美味しくて体に良い昆布を広める活動に人生を捧げる。 趣味:旅行、水泳、ピアノ、散歩  四姉妹の母

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