店長story41 《決断》
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「おめぇ、もう一人でやれ」
ちゃぶ台の先に座る社長が私に向かって言いました。
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南かやべ製氷という会社の社員にしてもらって10か月が過ぎようとしていた頃でした。
わずかなネット注文と北海道内の卸先との商売の中で、固定費・光熱費・人件費をかけずに続けた結果、利益が出ていました。
自分の給料を出すこともできていました。
毎日電卓をたたき1つの商品でいくら原価がかかり粗利はいくら出るのか、足し算引き算を繰り返していました。
経営というものを知らない私は、注文がある限りやり続けることだけを考えて、毎日、目の前の仕事を一人でこなす孤独な日々でした。
人様の会社で経理の仕事をやってもらい、いろいろと手間をかけてしまっていました。
ずっと社長に甘えていては悪いなと思っていたので、そう言われた時も当たり前のことと受け止めました。
さらに社長は続けて言いました。
「借金だけはするなよ!
借金のために仕事をするようにはなるなよ。」
社長の言葉から自分の中でぼんやりとではありますが感じるものがありました。
会社という箱、見た目にこだわり、売上にそぐわない資金を投じてしまうとのちにじわじわと身動きが取れなくなる可能性がある。
会社は自分の中に作り上げ、その時々で変形できるものでなければ続かない。
万が一、売上がなくなったとしても会社を継続できる資金力を持つ。
その期間はできるだけ長くしよう。
そして、小→大は夢があり素敵だが、大→小に転ずることもできる器用さも忘れずに持っておこう。
会社を作ると自分の名前が前に出る。
全て自分の責任となる。
頼るのは社長でもなく、父でもなく、夫でもありません。
うまくいくかどうかわからない時も、何が正解かわからない時も、どっちを選べばいいのか悩む時も、失敗したら全部自分の責任となるのを知りながら、全部決断して進めていかなければなりません。
とても大きな不安がありました。
孤独でもありました。
日々、自分のやり方があっているのかどうか自信がないまま仕事を続け、この不安をどう人に話せばいいのか。
前の会社がなくなる時よりもはるかに不安でビビってました。
エネルギッシュな希望と夢に満ち溢れた起業家とは程遠い、無理やり何もわからない表舞台に立たせれる気分でした。
でも、常に変化は必要です。ずっと同じ景色を見ることはできません。
流れに反することなく進むしかありません。
「社長。私、春に会社作って一人で
スタートしてみます。」
「大丈夫だ、たまちゃんょ。
この浜なら、まだまだやれる。」
社長の忠告と言葉を胸に刻み、新たにスタートすることを決めました。
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