店長story42 《起業》
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2014年 4月
会社を作る決心をした私は行政書士の方と事業目的や基本的な規則を定めた定款を作成しました。
会社の実印と角印を作り、各種書類を法務局へ提出し、
その後、年金事務所や税務署、労働基準監督署、北海道税事務所等に届け出をしました。
昆布などの食品を扱う会社なので会社名はシンプルに「能戸フーズ」にしました。
この時、屋号の「リ丁」を使うのはまだ早いような気がして辞めました。
会社を作るのと同時に、一つ大きな仕事がありました。
南茅部の漁業協同組合に出向き、正式に契約を交わし昆布を買えるようしてもらうことです。
文字に起こすととても普通で当たり前の事と思われますが、結構普通ではありません。
大昔から大阪の問屋や都会の大企業とやり取りをしている組合なので、新たに取引先は必要ありません。
「売ってやる」根性 (ア、ごめんなさい)なので、面倒くさい契約をして売る必要がありません。
まして、南茅部ではよそ者の若い女(もうそんなに若くなかったけど)に、売る必要なんてありません。
特に南茅部の浜はよそ者を受付けない地域性があると聞いていたので、不可能かもしれないと半分はあきらめの暗い気分でした。
そして、話をしなければならないのが・・・
南茅部漁業協同組合の偉い人で、南茅部の浜を牛耳っていて、各支所のボスを束ねている、
いわゆる 「南茅部のドン」 です。
会議室に通されドン氏を待っていると、左右の肩を交互に揺らしゆっくりとした足取りで入ってきました。
パンチパーマに体格のいい体、その体にジャストフィットした濃紺の組合服。
腕にはきらびやかに光る腕時計。
南茅部の頂点にふさわしい物腰、理想的とも言える威厳と迫力を持っています。
椅子にどんと構えた余裕の姿。
この広い漁業の町で多くの漁師(みなさん強面 汗)と職員を束ね、一次産業の元締めとなる組織役員としての迫力。
まさしくその大役にふさわしい貫禄のある人だなぁとつい見つめてしまいました。
「んで・・・どうしたいって?」
テーブルに肘をつき、ぷかぷかと煙草の煙を揺らがせ落ち着いた口調で聞かれました。
「私に昆布を買わせてください。」
ドン氏「能戸さん、あんた、何ができんのよ。」
迫力ある声に乗って、煙草の煙が意地悪に私に向かってじわりと迫ります。
固定費等の経費をかけずに販売をメインにやっているので売れる分だけ利益が残る。
今までの取引先と新規の取引先、個人のお客様がどれくらいいて、年間どれくらいの数量が必要かを話しました。
「すったらもんが!!」
鼻で笑われました。
「商売が小さいので、昆布は少量で結構です。南茅部で仕事をしていきたいのでどうか私に昆布を売ってもらえませんか?」
そう伝えるのが精一杯でした。
今日ここで、口約束だけでもOKをもらわないと先に進めません。
会社を作ったところで商売ができません。
会社の代表者として私は話すんだ。
(代表者と言っても私一人しかいないけど。)
今はお願いすることしかできません。
深々と頭を下げました。
最後には何とか承諾してくれることになりました。
契約を交わす際、定期を作り証書を渡します。保証金です。
会社が回らなくなると取引停止になり、定期は没収されます。
かなり劣勢の取引となりますが昔からのしきたりなのでしょうがありません。
今日、最初の一歩を踏み出せました。
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